
かくれさと苦界行(新潮文庫)
隆慶一郎
新潮社 / 1990-09-27
この本について
仕事でも人間関係でも、「表面に出てくる問題ばかり追って、結局なにも変わらないな…」と感じる時期ってありますよね。相手の感情でも、自分の迷いでも、目の前の“症状”だけをいじっても根が動かない。分かっているのに、どう扱えばいいのか掴めないまま日々が過ぎる。僕もずっとその繰り返しでした。 『かくれさと苦界行』を読んでいると、その“根”の部分に向き合う強さを淡々と描かれていて、ふいに背筋が伸びます。たとえば上手い医者の話にしても、恋や情けにしても、斬り合いにしても、みんな「表に出ている現象じゃなくて、そこに至る心や覚悟の深部」を扱っているんですよね。誠一郎が感情の砂漠みたいな心から、誰かの情けの一言で水が湧く場面なんて、自分の中の硬さをそのまま見せられているようでした。人をもてなす一念が知恵になる、というくだりも、妙に刺さるんです。無理に策を練るより、相手をちゃんと見るほうが早いんだよな、と。 物語としての豪快さとは別に、読んでいくうちに「人をどう受け止めるか」「自分の過去との折り合いをどうつけるか」という現実的な感覚が残ります。派手な教訓じゃなく、登場人物が自分の矛盾を抱えたまま進む姿が、こちらの迷い方と地続きなんです。 自分の感情の扱い方に行き詰まりを感じている人。あるいは、強さって何なのか掴めないまま大人になった気がしている人。そんな人にじわっと効いてくる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの18%が集中しています。
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