
感性は感動しない――美術の見方、批評の作法 教養みらい選書
椹木野衣
この本について
美術館に行っても「ちゃんと感じられてるのかな」と不安になったり、作品の前で説明を読んでばかりで、結局よくわからないまま帰ってくることってありませんか。知識を足せばわかるようになる気がするけれど、どこかでそれにも疲れてしまう。最近の自分はずっとそんな状態で、感性っていったいどこにあるんだろう…とぐるぐるしていました。 この本を読んでまず救われたのは、「感性をみがく」という発想そのものがズレている、と断言してくれるところでした。知識を積むより、自分の生活や記憶に根を張った“いまの自分”で作品と向き合うしかない、という視点。それは「もっと勉強しなきゃ」と自分を追い込んでいた肩の力を、ゆっくり抜かせてくれました。また、“感動しようとする態度”がかえって作品との距離をつくる、という話もかなり刺さりました。思えば、無理に感動しようとするときほど、何も残らなかった気がします。 さらに印象的だったのは、作者が「自分の舌を信じるように、絵の前での違和感や引っかかりを信じるべきだ」と語る部分です。美術に限らず、正しさよりも自分の判断に立ち戻ることの大事さを、こんなに素直に肯定してくれる本はなかなかありません。作品の前で立ち止まる時間の意味が、少しだけ変わりました。 自分の“感じ方”に自信が持てない人や、美術館でのモヤモヤを抱えたままの人には、静かに効いてくる一冊だと思います。
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