
カタストロフ前夜 ――パリで3・11を経験すること
関口 涼子
明石書店 / 20200311
この本について
災害のニュースを見たり、海外の友人に日本のことを聞かれたりすると、自分の感じている不安や戸惑いをうまく言葉にできないまま、胸の奥だけがざわつくことがあります。あの時の感覚を誰かに説明しようとしても、「正しさ」から少しでも外れそうで口が重くなる。そんな経験、僕自身よくあります。 『カタストロフ前夜』は、まさにその“言いにくさ”を抱えたまま震災をパリで経験した著者が、自分の揺れと向き合いながら書いた記録です。印象的なのは、フランスの人々が日本を「他人事ではない」と感じつつ、外国人として発言をためらう姿や、放射能への恐怖が文化や距離を超えて入り込んでくる瞬間が、静かに、でも確かに描かれているところ。自分の感情が言語化できずに曖昧になっていく時、この本は“その曖昧さのまま記録していいんだ”と教えてくれます。 もうひとつ心に残ったのは、数値に表れないもの──家で作られていた料理の味や、誰かの声の残像のような、はかない記憶をどう残すかをめぐる視点です。災害は「起きた瞬間」で終わらず、その後もじわじわと人の内側で続き、創作することさえ苦痛になるほどの負荷を与える。そのリアルさが、災害をめぐる自分の感覚の輪郭をそっと浮かび上がらせてくれます。 自分の不安を言葉にしづらい人、あるいは災害をめぐる“距離の取り方”にずっと迷っている人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの29%が集中しています。
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