
スピッツ論 「分裂」するポップ・ミュージック
伏見瞬
イースト・プレス / 2021-12-17
この本について
仕事でも日常でも、うまく説明できない“気持ちのズレ”を抱えたまま過ごすことってあります。楽しいはずなのにどこか不安だったり、前に進んでいるのに自信がついてこなかったり。自分だけが分裂しているような感覚に、ちょっと疲れてしまう瞬間があると思います。 『スピッツ論』は、その分裂を無理に整えたり閉じたりせず、「そもそも人も音楽も、そういう揺れを前提にできているのでは」という視点をくれます。読者が抜き出していた「平凡なものに非凡が宿る」という逆説や、「幸福を過去形で歌う」感覚、「楽観的な曲調と悲観的な言葉のズレ」などは、まさに自分の日常にも思い当たるものばかりでした。明るく見せたい気分と、胸の奥に沈んでいるものが同居してしまうあの感じを、音楽を通して丁寧に言語化してくれます。 さらに、歌詞だけでなくサウンドの“迷い方”まで読み解いてくれるので、表現がどんなふうに広がったり閉じたりしながら出来上がっていくのかが立体的に見えてきます。音数が増える時期と削ぎ落とされていく時期の違いを追っていくと、自分の仕事や創作で「どちらに振れればいいのか分からない」と立ち止まったときのヒントにもなるはずです。 刺さるのは、「明るさと不安が同時にある自分を、まだうまく言葉にできていない人」。スピッツの音の揺れを手がかりに、自分の中の揺れもすこしだけ扱いやすくなる本でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの18%が集中しています。
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