
ずばり東京 (文春文庫 (127‐6))
開高 健
文藝春秋 / 1982-10-25
この本について
仕事のスピードについていくのがやっとで、気持ちが置いてけぼりになることってありませんか。効率よく動けているはずなのに、どこか自分が薄くなったような感覚が残るというか。そんなときに開高健の『ずばり東京』を読むと、視点が少しゆるみます。近代化の窮屈さや、「怠ける余白こそ文化だ」という逆説的な感覚に触れると、今の生活のスケールをちょっと変えて見られるんです。 この本が効くのは、まず「働くことへの正しさ」を疑っていいと思わせてくれるところ。身を粉にする快感を当然の価値としない語りは、張りつめすぎた心に割れ目を入れてくれます。さらに、犬や猫との距離感の話や、人の思考が肉体に縛られているという描写は、自分の弱さや癖をそのまま抱きしめるような気分にさせてくれます。そして東京という巨大な街のなかで、通過者として漂う感覚や、庭や土が細胞核のように感じられる瞬間の描写が、「生きている場所の捉え方」をやわらかくしてくれるんです。 刺さるのは、一度立ち止まって世界との距離を測り直したい人。開高健の文章は決して前向きな解決策を示すわけではないけれど、硬くなった思考をほぐしてくれる種類のリアルさがあります。今いる場所の見え方が、少しだけ違ってくる本です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの42%が集中しています。
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