
白鯨(上)
ハーマン・メルヴィル and 高村勝治
岩波書店 / 2004-08-19
この本について
なんとなく気持ちが沈む日ってありますよね。理由もなく心の中が湿っていて、部屋の空気まで重く感じるようなあの感じです。こういう時って、無理に前向きになろうとすると逆にしんどかったりします。そんな気分のときに『白鯨(上)』の抜粋を読むと、やけにストンと腑に落ちることがあって、読んだ人が保存した理由も少しわかる気がするんです。 たとえば「心のなかが小雨のそぼ降る十一月」という表現。あれ、まさにあのモヤモヤを言い当ててくるし、「寝室に暖房は置くな」という一見どうでもいい主張も、読み進めるほどに“過剰に快適さを求めすぎると自分の感覚が鈍る”という示唆に聞こえてきます。また「笑いぐさをたくさん身につけている人は予想以上に立派」という一文は、欠点や失敗を抱えたままでもちゃんと生きていい、と言われているようで妙に励まされます。こういう部分が積み重なって、物語のスケールとは別に、人間の小さな気分の揺れに寄り添ってくれるんですよね。 巨大な鯨の骨や、知らない専門用語が平然と出てくる世界観も、むしろ日常の悩みを相対化してくれるようなところがあります。目の前のことにばかり詰まってしまう人ほど、この距離感は効くと思います。 日々、理由のない倦怠に引っ張られやすい人にとっては、思いがけず呼吸が軽くなる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
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