
みずうみ(新潮文庫)
川端康成
新潮社 / 1960-12-27
この本について
日々の生活の中で、自分でも説明しにくい不安やざわつきにのまれることがあって、「何に怯えているのか、自分でもよくわからない」という感覚に落ちることがあります。表向きは普通に振る舞えていても、足もとだけずっと揺れているようなあの感じです。 川端康成の『みずうみ』の抜粋を読んでいると、読者が保存したいと思った場面がどれもその“揺れ”に直結しているように見えます。銀平が古着を捨てることすら犯罪のように感じたり、美しい他人に出会ってしまった瞬間に自分の感情を持て余したり、女と歩きながらも自己嫌悪に引きずられていく様子は、誰にも説明できないまま胸の奥でざわつく気配そのものです。正しくもないし、美しくもない。けれど人間ってこういう瞬間のほうが多いよな、と静かに思わされます。 この小説が効くのは、銀平の行動を通して、理由のわからない不安や衝動が「ただそこにあるもの」として描かれているところです。理解しようと力むより、まず“そう感じてしまう時がある”という事実を受け取れる。もう一つは、景色の描写に自分の感情が溶けていくような感覚があって、心がざわつく瞬間の輪郭が少しだけつかめるところです。霧の軽井沢や氷の張った湖面のイメージが、自分の中の得体の知れない揺れとつながっていく感じがあります。 人の心の暗がりに妙な親近感を覚えるタイプの人に、静かに届く一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの23%が集中しています。
読書の順序
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