
若き数学者のアメリカ(新潮文庫)
藤原正彦
新潮社 / 1981-06-25
この本について
知らない土地に行くと、自分の実力や立ち位置がやけに気になってしまう時ってありますよね。努力しているつもりでも成果が出ない焦りとか、周りにうまく馴染めない孤独感とか。僕も読む前は、その感覚をうまく言語化できずにいました。 『若き数学者のアメリカ』が面白いのは、著者がまさに同じような迷いを抱えながら、研究室とアパートを往復するだけの日々や、相手に合わせようとして逆に自分を見失う瞬間を、かなり正直に書いているところです。競争心に押しつぶされそうになったり、異文化の中で自分の日本性をどう扱えばいいのか分からなくなったり。読んでいると「これ、自分にも覚えがあるな」と勝手に胸がざわつきます。 でも同時に、この本は妙に励まされるんです。例えば、正しい英語を話そうとするだけで十分だったと気づく瞬間や、気持ちを開くだけで環境との距離が急に近づく場面。あるいは、成果だけを追っていた視点が、いつのまにか「自分が何を大事にするか」へと少しだけ変わっていく感じ。大きな答えをくれるわけではないのに、読後には肩の力が抜けている不思議な本です。 異文化に限らず、「環境に馴染めず自分の軸を見失いそうな時」に静かに効いてくるタイプの一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの27%が集中しています。
読書の順序
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