
蓼喰う虫(新潮文庫)
谷崎潤一郎
千歳出版
この本について
最近、人との距離感や、年齢を重ねる自分の変化にうまく折り合いがつかないことってありませんか。昔ほど素直に振る舞えないとか、若い頃には気にならなかったことが急に気になり始めるとか。「これって成長なのか、ただ老けただけなのか」みたいな、うまく名前のつかないモヤつきが出てくる時期があります。 『蓼喰う虫』を読んでいると、そのモヤモヤを正面から見つめ直す時間が生まれます。登場人物たちは、まさに自分の“変わってしまった部分”と折り合いをつけようとしていて、例えば、老いていくことへの諦めと、もう一度だけ自由を求めたくなる気持ちが同時に湧いてくる場面。ああ、こういう相反する感情って誰の中にもあるよなと思わされます。また、夫婦であっても互いの自由や世間体の間で揺れ続ける様子が丁寧に描かれていて、「正しさより、その人にとっての現実」を考えさせられました。抜粋を保存した方は、おそらくこの“矛盾した気持ちを抱えたまま生きる姿”に触れることで、自分の中にも同じものがあると感じたのではないでしょうか。 物語としての起伏よりも、登場人物がどう自分と向き合うかがじわじわ効いてくるので、迷っている今の自分を外側から眺めてみたい人にはぴったりです。特に「割り切れない感情を抱えたまま大人になってしまったな」と思う人には刺さると思います。
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