
もういちど生まれる
朝井リョウ
この本について
人間関係でも仕事でも、うまく言葉にできないモヤモヤってありますよね。今の自分は何かを失っている気もするし、かといって劇的に変わりたいわけでもない。ただ、ふとした瞬間に胸がざわつく。あのときの夏や、友だちとの距離感、少し無理して盛り上げ役をやってしまう癖。こういう感情って、大人になるほど置き場所が分からなくなっていきます。 『もういちど生まれる』は、その「置き場所のなさ」みたいな感覚にそっと触れてくれる小説でした。線香花火みたいに繊細な誰かに惹かれてしまう理由とか、何でもない夜の帰り道だけが急に未来より大事に思えてしまう瞬間とか、普通に話せる相手の貴重さに気づいたときの胸の痛みとか。登場人物の体感を追っていくうちに、自分の中で言語化できずに放置していたものが、少しずつ形になっていくんです。 特に響いたのは、「変わりばえのしない夏が、なぜか幸福に思える」という感覚が何度も描かれるところで、ああ、自分もあの頃のように“過ぎてしまうのが惜しい時間”をちゃんと大事に思えているんだな、と気づけたことでした。無理に前向きになれと言う本ではなくて、小さな揺れをそのまま肯定してくれる感じがします。 過去の自分をうまく扱えずにいる人や、今をどこに置けばいいか迷っている人に、静かに刺さると思います。
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