
正欲
朝井リョウ
小学館 / 2021-03
この本について
人と関わるとき、「距離の取り方がいつもわからない」とか、「自分の中の感情や癖を、どこまで他人に説明できるのか」みたいなことで立ち止まることってありませんか。僕も日々そこに引っかかっていて、誰かと近づくたびに、どこかで自分の輪郭がぼやけていくような感覚があります。 『正欲』は、そういう“説明しきれない自分”を抱えた登場人物たちの日常を、やたら繊細に描いていきます。たとえば、身体が触れ合っても性的な興奮はないのに、触れているあいだだけ寂しさが溶けていく感覚とか。恋愛がこの世界の前提として扱われる瞬間に覚える不安とか。理解されない欲望を抱えたまま、それでも社会の中で位置を探し続ける姿とか。読んでいると、自分でも言葉にできなかった「なぜしんどいのか」の輪郭が、ゆっくり形になっていくんです。 この物語は、何かを劇的に変えてくれる本ではありません。でも、世界の“当たり前”にうまく馴染めない人が、どこでつまずいていたのかをそっと照らしてくれる感じがありました。誰かとの関係に名前がつかなくてもいいとか、世の中の情報が全部「明日死なないため」に収束していくことへの違和感とか、読みながら何度も頷いてしまいました。 「普通の枠に入れない自分をどう扱えばいいのか迷っている人」に、特に届くと思います。こういうところで悩んでいるのは自分だけじゃないんだと、少しだけ呼吸がしやすくなる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第9章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの17%が集中しています。
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