
優駿(上)(新潮文庫)
宮本 輝
この本について
仕事でも人生でも、自分がどこに向かっているのか見えなくなるときがあります。努力しているつもりでも、手応えがないというか、流れに置いていかれているような気がするあの感じです。そんなときに『優駿(上)』を読むと、少し呼吸が整うような感覚がありました。 読者の抜粋にもあるように、この物語は血統の話や名馬の系譜が丁寧に描かれていて、一見すると専門的に思えます。でも実際に刺さるのは、三百年続く流れの中で、一頭の馬がどんな偶然と必然の重なりで生まれてくるのか、そこに人間たちの小さな判断や迷いが積み重なっているという視点です。自分の毎日の選択も、すぐに成果にはつながらなくても、どこかで流れをつくっているのかもしれない。そんなふうに考えられるようになるのが、この本のささやかな効き方だと思います。 もうひとつ、霜柱のきらめきや桜の枝ぶり、こぬか雨の感触といった描写が多く残されているのは、登場人物たちが決断の前に立ち止まる“静けさ”に読者自身が寄り添えたからだと思います。現実を無理に前向きに塗り替えるのではなく、目の前の風景を受けとめながら少しだけ進む。そのペースを肯定してくれる物語です。 血統や競走馬の話に興味がある人はもちろんですが、「急がなきゃと思いながらも、一歩が重いとき」に特に刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの62%が集中しています。
読書の順序
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