
花宵道中(新潮文庫)
宮木 あや子
新潮社 / 2009-09-01
この本について
人にどう見られているか、感情より役割を優先してしまうときってありませんか。平気なふりをしながら胸の奥ではざわついていて、でもその弱さを口に出せないまま飲み込んでしまう。私も似たような場面で固まってしまうことが多くて、読んでいて思い当たるところがいくつもありました。 『花宵道中』に出てくる遊女たちは、相手に合わせた表情を選ばないと生きられない世界にいながら、心の奥ではどうしようもなく揺れている。その揺れ方が、とにかく生々しい。声の抑揚ひとつ、触れられたときの戸惑い、嫉妬や羨望を押し殺しきれない瞬間が細かく描かれていて、「気持ちが身体に追いつかないときってこういう感じだよな」と、妙に腑に落ちました。誰かを求めてしまう弱さも、見ないふりをしたくなる痛みも、つい比べてしまう自分も、そのままの形で出てくるんですよね。 この物語が効いてくるのは、強くなろうとするより前に、「自分の中の正直じゃない部分」をそっと認めたいとき。人を想うときの不器用さや、どうにもならない執着の温度を、そのまま見せてくれるからです。派手に救ってくれるわけではないけれど、登場人物たちの揺れを追いかけているうちに、自分の中の感情の粒が少しだけはっきりする。 こんな人に刺さると思います。強がりの裏で、実は誰かに触れてほしかった日を覚えている人。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの28%が集中しています。
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