
ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)
岩井 志麻子 and 甲斐庄 楠音
KADOKAWA
この本について
日々をちゃんとやっているつもりでも、ふと「自分の狭い視界の外側では、どんな世界が広がっているんだろう」と不安になることがあります。見えているつもりで見えていないものがある気がして、でもそれを言葉にするほどでもない…そんな曖昧なざわつきです。 『ぼっけえ、きょうてえ』の抜粋を見ていると、そのざわつきの正体に手を触れられたような感覚がありました。透ける空の青さや、藁葺き屋根の崩れた集落の風景、隔離された人々の暮らし。特別な事件というより、そこに生きる人の息づかいや、どうしようもない周縁の感情がじわっと染みてきます。役場の小さな権力や、妾の身体に触れる加減のわからなさ、優越と劣等が綯い交ぜになった語り癖。こういう「人の暗さ」は、自分の中にもあるものだと気づかされます。 この本が効くのは、世界の残酷さをただ怖がるのではなく、「人の弱さの積み重ねが風景をつくる」という見方を与えてくれるところだと思います。恐怖というより、視界が少し広がる感じに近い。閉じた村の空気を真正面から描くことで、自分の生活の中で目を逸らしてきた部分にも少し触れやすくなる。そうした静かな変化が起こります。 日常の温度とは違う場所の息づかいに触れて、自分の感覚を揺らしてみたい人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの31%が集中しています。
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