
ダリアの笑顔 (光文社文庫)
椰月 美智子
光文社 / 2010-07
この本について
人と比べて落ち込んだり、家の中の空気に振り回されたり、自分の“立ち位置”みたいなものがよく分からなくなることってありますよね。大人になっても同じで、外では普通に振る舞えても、家や家族のことが絡むと妙に弱くなる。そういう感覚を久しぶりに思い出させられたのが、この『ダリアの笑顔』でした。 抜粋を読むと、真美が抱えている「自分は何者なのか」という揺れが、とても小さな描写で積み重ねられていきます。弟が褒められるたびに胸がざわつく感じとか、グループに属しきれない居心地の悪さとか、親のケンカを前に声を失ってしまう瞬間とか。どれも大きな事件ではないのに、確実に心に残る痛みで、読んでいるこちらまで昔の自分を思い出してしまう。特に、育児日記をこっそり持ち帰る場面は、自分の存在を確かめようとする気持ちがそのまま言葉になっていて、一度読むと離れません。 この物語の効き目は、主人公が無理に強くならないところにあると思います。立ち向かうわけでも、劇的に変わるわけでもなく、ただ日々の揺れのなかで「自分にはこう感じる理由があったんだ」と見えてくる。その気づきが、読んでいる側にも静かに伝わってくるんです。家族に言えなかった本音を抱えたまま大人になった人には、とくに刺さるはず。 家の中の些細な言葉や音が、なぜか今も心に残っている——そんな人に読んでほしい一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第8章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの16%が集中しています。
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