
昨日の海は
近藤 史恵
PHP研究所 / 2015-08-04
この本について
大人になっても、家族との距離感や昔の気持ちがふと胸に戻ってくることってありますよね。「もう終わったこと」と思いたいのに、どう向き合えばいいのかは今でもはっきりしないまま。私自身、心のどこかに残り続けるモヤモヤをどう扱えばいいのか、長い間よく分からずにいました。 『昨日の海は』を読んで感じたのは、あのどうしようもなく説明しにくい“家族に対する複雑な気持ち”を、無理に整理しようとしなくてもいいんだという視点でした。たとえば「怒ってはいない、恨んでもいない、でも寂しかった」という気持ちを、きれいに一本にまとめなくていいという描き方がすごく救われますし、大人になれば自由になれると思い込んでいたのに、実際にはそうでもない現実も淡々と書かれていて、変に勇気づけようとしてこないところが逆に効きました。物語として追えるのに、どこか自分の記憶に触れてくる瞬間があるのが、この本の静かな力だと思います。 昔の家族との関係を「正しく言語化できないまま抱えてきた人」に、とくに刺さる一冊です。感情をこじ開けて整理させるような話ではなく、むしろ“そういう形のままで存在していていい”という余白を見せてくれる物語でした。読み終わったあと、自分の中のいくつかの出来事を、少しだけ別の角度から眺められるようになると思います。
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