
BUTTER(新潮文庫)
柚木麻子
新潮社 / 2020-02-01
この本について
仕事でも人間関係でも、「正しさ」や「努力」に寄りかかりすぎて、いつの間にか自分が何を感じているのか見失ってしまう時があります。私もそうで、食べ物ひとつ選ぶのにも力が入ってしまう日があるんですが、ふとこの小説を読むと、その凝り固まり方そのものが物語の中の里佳と重なって、妙に胸がざわつきました。 『BUTTER』は事件ミステリーというより、食と欲望をめぐる視点がじわじわ効いてくる作品です。特に、バターとマーガリンの味の区別がつかない里佳と、「本物」を語りながら人を圧倒する梶井。二人の会話の間にある“感覚の差”が、私たちの日常にもそのまま潜んでいるんですよね。誰に合わせて生きてきたのか、どうやって欲を抑えてきたのか、ちょっとした食の描写が急に自分の話に変わってくる感じがあります。 もうひとつ刺さったのは、誰かと食べても最後は一人に戻ってしまう、あの空洞のような感覚です。満腹なのに妙にさみしい瞬間や、頑張っているはずなのに孤立していく感じを、作者はさらっと描きながらも容赦なく照らしてきます。事件そのものより、そこに集まる欲望や偏見、そして「自分をどう扱ってきたか」の問題が見えてきて、読み終えた後にじんと重さが残りました。 自分のこだわりや弱さを一度立ち止まって見てみたい人に刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの16%が集中しています。
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