
あいにくあんたのためじゃない
柚木麻子
新潮社
この本について
育児って、誰に頼れるわけでもなく一人で回している時ほど、ちょっと外に出ただけの行動まで「これって責められるかな」と不安になりますよね。私も、人の目を気にしすぎて自分の欲を後回しにしがちで、あとから「あれ、そこまで自分を追い詰める必要あった?」と気づくことがよくあります。 『あいにくあんたのためじゃない』を読んで刺さったのは、まさにその窮屈さを解きほぐすような場面が多いことでした。赤ちゃん連れでラーメンを食べたことをネットに揶揄され続ける場面は、行為そのものより「母親とはこうあるべき」の空気に押しつぶされていく苦しさがリアルで、読んでいて胸がぎゅっとしました。でも同時に、店主が素材を淡々と語るシーンや、子どもたちがスープを飲み干す様子など、小さな日常がただ日常として肯定されていく流れに救われます。 もうひとつ心に残ったのは、みんなが限界ギリギリで育児している夜の描写です。子どもが寝ない、仕事が進まない、吐いたり泣いたり、誰かが急に黙り込んだり。ドラマチックではないのに、現実のしんどさがそのまま並んでいて、「ああ、一人だけじゃないんだ」と思えるあたたかさがあります。本が肩代わりしてくれるのは、「弱音を吐いていい」という感覚なんだと思います。 自分を責めがちな人、完璧な親であろうとして疲れてしまう人には、特に静かに効く一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの50%が集中しています。
読書の順序
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