
この本について
シェイクスピアって、原文はもちろん、訳によっても印象が変わりすぎて、どこから触れればいいのか分からないまま時間だけたってしまうことがあります。名台詞は知っているのに、いざ物語として読むと置いていかれる感じがする、そんなモヤモヤを抱えている人は多いと思います。僕もその一人でした。 阿刀田高さんの『シェイクスピアを楽しむために』は、そのつまずきポイントをやさしくほどいてくれます。福田恆存、松岡和子、小田島雄志…訳者ごとの違いがどこに出るのか、具体的に言葉を拾いながら教えてくれるので、「訳の比較ってこうやって読むのか」と視界が開けていきます。また、「三一致」のような古い演劇の約束事や、リア王の二つの家族のエピソードがどう並行して配置されているのか、といった構造的な読み方も扱ってくれるので、ストーリーの全体像がつかみやすくなります。難しそうな言葉が出てきても、威圧的にならない語り口が読んでいて気楽です。 シェイクスピアを「名作だから読む」ではなく、「自分の頭で理解して楽しみたい」という人に向いています。読み終えるころには、あの有名なモノローグが、ただの名言ではなく物語の中でどんな重さを持っていたのか、少しずつ手触りのあるものに変わっていくと思います。
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