
ナオミとカナコ
奥田英朗
幻冬舎 / 2017-04-11
この本について
忙しさに追われていると、正しさとか、優しさとか、そういう基準がぐらつく瞬間ってありませんか。普段なら気にするはずの小さな罪悪感も、状況が切羽詰まると一気に後ろに押しやられていく。あとで振り返って「あれ、自分ってこんな判断するんだっけ」と少し戸惑うようなあの感じです。 『ナオミとカナコ』を読んでいて、抜粋されていた「生存がかかっていると、日常の悩みなど悩みでなくなる」という一文に、同じ空気を強く感じました。ふたりの行動は決して褒められたものではないし、周囲の中国人コミュニティのしたたかさも綺麗な言葉では説明できません。でも、その“綺麗じゃなさ”の中に、人が追い込まれた時の等身大の判断が描かれていて、読みながら自分のグレーな部分も静かに突かれるような感覚がありました。 さらに、登場人物の細かな言動や語彙から漂う、ためらい、逡巡、暗澹とした空気がリアルで、誰かを責めながらも自分も完全には正しくいられないという、あの嫌なバランスが丁寧に掬われています。だからこそ、物事を白黒つけるよりも「人は状況次第で変わる」という視点をもらえるし、自分の判断に悩んでいる時の小さな拠り所にもなります。 きれいごと抜きで、人間の“揺れ”をそのまま見たい人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの28%が集中しています。
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