
密林の語り部 (岩波文庫)
バルガス=リョサ and 西村 英一郎
この本について
最近、自分たちが「正しい」と思い込んでいる価値観に、じわっと違和感を覚える瞬間が増えた気がします。何が正解なのか分からなくなるし、誰かの文化や習慣に口を出していいのかも判断がつかない。そんなモヤモヤに触れたときに思い出したのが『密林の語り部』でした。 この本は、アマゾンの民族に関わる外側の人間の視点と、語り部として世界を語る内側の声が交互に現れて、いま自分が立っている場所そのものを揺らしてきます。例えば「進歩って結局こちらの勝手な言い分なんだ」と語る場面に、読者が強く反応しているのを感じました。相手を“遅れている”と決めつけてしまう自分の目線そのものが問われているようで、読みながら何度も手が止まります。また、蛍の神話や初潮の儀礼の描写のように、彼らの世界の秩序がものすごく具体的に立ち上がるおかげで、文化の違いが単なる情報ではなく、生きている理屈として迫ってきます。 そして何より、語り部という存在が「物語を紡ぐことは、その文化のいちばん深いところを生きることなんだ」と語られるくだりは、言葉を使って何かを伝えようとする人間なら少し胸が詰まるはずです。自分の言葉が、誰かの世界を勝手に塗り替えてしまう危うさと、それでも語らずにはいられない理由の両方が描かれていて、読後も長く残ります。 自分の価値観がどこから来たのか一度立ち止まりたい人にとって、静かに効いてくる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの21%が集中しています。
読書の順序
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