
元老―近代日本の真の指導者たち (中公新書)
伊藤之雄
中央公論新社 / 2016-06
この本について
ときどき、自分がいる組織でも「誰が調整役を担うのか」「制度の隙間を誰が埋めるのか」がよく分からないまま物事が進んでいくことがありますよね。形式上の“正しさ”とは別に、実際には人と人のあいだで均衡を取る人がいないと、歯車がどんどんずれていく感じ。そういうモヤモヤに、この本は静かに手を伸ばしてくれました。 『元老』が扱うのは、憲法に書かれていないのに国家の調停役を担った人たちの話です。彼らが何を見て判断し、なぜうまくいかなくなったのかを追っていくと、「制度は完璧でも、運用する側が状況に適応できなければ機能不全になる」という、ごく現実的な視点が浮かび上がります。抜粋にもあるように、天皇も元老も陸軍もうまく統制しきれなかった局面が続くのですが、その背景には、長期的な視野をもつ人が減り、慣行の意味を理解したうえで調整できる存在がいなくなっていくプロセスが丁寧に描かれています。 読んでいて感じたのは、「判断の質」は肩書では決まらず、状況の変化に合わせて役割を更新できるかどうかで決まる、ということでした。歴史の失敗を遠くから眺めるというよりも、自分の職場やチームの意思決定を思い出しながら読むと妙に腹落ちします。 権限よりも“誰がバランスを取るのか”が気になる人には、特に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの18%が集中しています。
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