
すべては歌のために ポップスの名手が語る22曲のプロデュース&アレンジ・ワーク
武部 聡志
この本について
仕事でも創作でも、「自分にないものを無理に出そうとして空回りする」みたいな時期ってありますよね。成果を出さなきゃと思うほど、派手さや分かりやすさに引っぱられて、本来の良さがぼやけていくあの感じ。僕もよく迷います。 この本を読んで響いたのは、武部さんが徹底して「その人がすでに持っているもの」を起点にしているところでした。声は生きてきた時間そのもので、無いものを引き出すことはできない。だからこそ、どう導けばその人らしさが歌に投影されるのかを考える。これは音楽に限らず、チームメンバーとの関わり方や、自分の強みの見つけ方にも置き換えやすい視点でした。 さらに印象に残ったのは、「売れ線」に寄りかかりすぎない姿勢です。キャッチーさを否定しないけれど、それだけを軸にしない。すでにある素材をどんなふうに広げられるか、どうすれば聴いた人の頭の中に映像が立ち上がるか。そこに時間をかけている姿勢は、結果だけを追いがちな日常のブレーキにもなるというか、雑になっていた判断基準を整えてくれる感覚がありました。 自分の仕事に「ゼロからの創造」を求めすぎて苦しくなっている人や、何を足せば良くなるのかばかり考えてしまう人には、静かに効く本だと思います。
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