
壱人両名 江戸日本の知られざる二重身分 NHKブックス
尾脇 秀和
この本について
最近、制度とか規則の“建前”と、実際の運用の“本音”のあいだでモヤモヤすることが増えました。自分の立場や役割に合わせて名前や顔つきを変えているような感覚になる時があって、それって不誠実なのか、ただの現実対応なのか分からなくなるんですよね。 この本を読んでいて一番刺さったのは、江戸時代にもまったく同じような揺らぎがあったことでした。身分や名前が“株”として売買され、表向きは筋を守りつつ、実際は二つの身分を使い分ける「壱人両名」が、ごく自然な調整の作法として存在していた。公にバレなければ問題にならない、でもバレたら一気に“秩序”の脅威になる。その緊張感は、ルールと現実の落としどころを探す今の私たちとかなり地続きに感じられました。 もう一つおもしろいのは、当時の社会が「どこに属しているか」を何より重視していた点です。村の支配が入り組んでいて、父と子で身分が違うことも珍しくない。肩書きはその人の社会的な“入口”を示す記号だった。そう思うと、現代の“所属”にしばられた生き方も、急に歴史の中の一事例に見えてきて、少し気が楽になります。 制度の建前と、自分が生きていくための現実対応。その距離感に悩んでいる人に刺さる本です。
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