
愚か者の身分 (徳間文庫)
西尾潤
徳間書店 / 2019-09
この本について
人の善意って、どこまで信じていいのかよく分からなくなる時があります。助けたい気持ちと、相手に踏み込んでしまう怖さ。その境目に立つと、結局どっちに転んでも少しモヤモヤが残るんですよね。僕自身、余計な一言だったかなとか、逆に言うべきだったかなとか、後から振り返って悩むことが多いです。 『愚か者の身分』を読んでいて救われたのは、そのモヤモヤが「人としての生々しさ」そのものとして描かれていたところでした。抜粋にもあるように、頼まれごとにひとまず「わかりました」と返してしまう主人公の丈夫や、金がないのに無理して礼をしようとするタクヤの姿は、どちらも不器用で、だけど放っておけない。こういう場面が続くことで、人間関係の“綺麗にはまとまらない部分”がむしろ丁寧に見えてきます。善意と打算の境目で揺れる感じや、相手の事情を想像しながらも全部は分からない距離感が、そのまま物語の背骨になっているように思いました。 自分の判断が正しかったのか分からないまま、それでも人と関わり続けるしかない。そんな時に、この作品は少しだけ肩の力を抜かせてくれます。完璧な答えを示す本ではないけれど、「それでも関わろうとする姿」を肯定してくれる感じがあるんです。 特に、人間関係で迷いがちな人に刺さると思います。
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