
生命式 (河出文庫)
村田沙耶香
河出書房新社 / 2019-10-17
この本について
他人と同じように振る舞えているのか、ときどき不安になります。普通って何なのかも分からないし、誰かの価値観に合わせているうちに、自分の感覚がどこかへ行ってしまう感じもある。周りに馴染もうとしながら、でもどこかで「本当は違うんだけどな」とつぶやいてしまうあの感じです。 村田沙耶香『生命式』は、そのモヤモヤを無理に解消しようとはしません。ただ、自分が感じている「違和感」そのものに光を当ててくれるところがあります。例えば、正常と呼ばれるものの心許なさだったり、食べ物や文化を介して見えてくる「他人の世界」の距離感だったり、みんなが少しずつ噓をついて成り立っている社会の脆さだったり。読んでいると、ああ、自分が戸惑っていたのは変だからじゃなくて、もともと世界がそういう構造だからなんだ、と少しだけ息ができるようになります。 特に刺さったのは、誰かの価値観に強く引っ張られそうになったとき、自分の身体や欲望を取り戻す感覚がちゃんと描かれているところです。強さではなく、ただ「自分のままでいたい」と願うときの小さな抵抗。その現実的な手触りが、この本にはあります。 「周りと同じ顔をしながら、本音は常に別の場所にある」というタイプの人には、けっこう深く届くと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
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