
人類の都 なぜ「理想都市」は闇に葬られたのか
ジャン=バティスト・マレ and 田中 裕子
この本について
最近、「大きな理想って結局だれのためにあるんだろう」とか、「技術や都市計画の話がきれいごとに聞こえてしまう」といったモヤモヤを抱えることが増えました。便利にはなっているのに、自分がその流れのどこに立っているのか、ふと見えなくなる瞬間があります。 『人類の都』は、そんな感覚に少し輪郭を与えてくれる本でした。ユートピアを夢見た芸術家や建築家、資本家たちが本気で世界を良くしようと動いたのに、その理想が政治や富の力学に飲み込まれていく。その過程を追うと、「大きな物語」に期待する気持ちと、「現実のズレ」に戸惑う気持ちの両方が自分の中にもあることに気づかされます。テイヤールの“叡智圏”や、現代のテック企業の救世主的な語りが、こんなに昔から繰り返されていたのかと思うと、今の世界の見え方が少し変わります。 特に刺さったのは、理想そのものより、それを支える人間の欲や不安、承認欲求が丁寧に追われているところです。夢が崇高であればあるほど、現実の足場が弱くなる。その揺らぎを知ることで、こちらも無理に強がらなくていい気がします。 「理想と現実の間で立ち止まることが多い人」に、静かに効く一冊です。
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