孤島パズル 江神シリーズ (創元推理文庫)

孤島パズル 江神シリーズ (創元推理文庫)

有栖川 有栖

累計読者数3
平均ハイライト数 7件/人
star総合評価 37/100
start序盤集中型

この本について

人付き合いでも仕事でも、「自分のペースで考えたいのに、周りに合わせて流されてしまう瞬間」がふとあります。あとから思い返して、あれは本当に自分の選択だったのかなと少しだけ胸がざわつく。そんな時に、視点をそっと整えてくれるのが『孤島パズル』でした。 この本の面白さは、事件そのものよりも、人と人の距離感の描き方がじんわり効いてくるところです。例えば、モアイ像や古寺の柱をなでる江神さんの仕草を、語り手がただ「見ている」場面。そこには説明のつかない優雅さと、相手への静かな敬意が滲んでいて、自分のまわりの誰かをこういうまなざしで見られているだろうかと考えさせられます。また、誰かに合わせるのが得意ではない二人が、マリアの存在で少しだけ行動がスムーズになる場面も、主体性と協調のあいだで揺れる自分に重なりました。 さらに、闇が柔らかく感じられたり、背中に微かなざわめきを覚えたり、言葉で説明できない気配が丁寧に積み重ねられていて、読み終わったあともしばらく頭のどこかに残ります。謎解きはもちろん、人物同士の“読んでいない前編”のような関係性に惹かれる人には、とても心地よい読書体験になるはずです。 静かな関係性の機微が好きな人に刺さる一冊だと思います。

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