
この本について
仕事でも人間関係でも、自分だけ取り残されているような気がする時ってありますよね。周りが順調そうに見えるほど、こちらは迷いの輪郭ばかり濃くなるというか。「この状況に意味なんてあるのか」と考えてしまう夜もあると思います。僕も似たような感覚を抱えたまま、なんとか日々を回しているタイプです。 この本が静かに効いてくるのは、その「迷い」を急いで整えようとしない姿勢が貫かれているところでした。汚れや澱みを含んだままの岩手山の比喩にあるように、見栄えの悪い部分があっても、それを切り捨てずに眺めていいんだと許される感じがあります。理解できないまま抱えていていい、白黒をつけなくても人は生きていける、という視点は、焦り続けてきた自分には少し救いでした。 もう一つは、根を張る話です。成果や結果を出さなきゃと焦るほど、足元の土がスカスカになっていることに気づけなくなる時がありますよね。苦しい時期にこそ根が伸びるという考え方は、決して精神論ではなく、著者自身の経験からにじみ出ていて、妙なリアルさがあります。追い込まれた状況でこそ立ち上がる力が出るという描写も、無理に前向きにさせようとする感じがなくて受け取りやすいです。 そしてこの本は、導き手や教師という存在を「触媒」として描くのもおもしろいところです。誰かが人生を変えてくれるわけじゃなくて、自分の中のスイッチを押すきっかけにすぎない。そう考えると、いま見えている選択肢の狭さにも少し余裕が生まれます。 迷いながらでも生きていくしかない人、白黒つけられないまま歩いている人には、そっと寄り添ってくれる一冊だと思います。
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