
横道世之介
吉田 修一
文藝春秋 / 2012-11-10
この本について
なんとなくですが、人との関わりについて「結局あの時間って意味あったんだろうか」とか、「大事にすべきものをどう扱えばいいのか分からない」とか、ふと立ち止まってしまう瞬間ってありますよね。失ったものや、自分の手を離れていった関係を前にすると、答えのないモヤモヤだけが残ったりします。 『横道世之介』を読んでいて刺さる人が多いのは、そういうモヤモヤに対して、きれいに片付く答えを示すのではなく、「別の角度から光を当ててくれる」からだと思います。たとえば“失ったものをどう乗り越えるか”という部分。育てること=守ることじゃなくて、失ったあとに立ち上がれる強さを渡すこと、という視点は、仕事でも人間関係でも、そのまま自分の日常に置き換えられる感覚があります。 それから、「世之介と出会った人生と出会わなかった人生はたぶん変わらない。でも、彼に会えた自分は得をしたように感じる」というあの一節。これも、関わった相手が“運命を変える存在”じゃなくても、日々にちょっとした余白やあたたかさを残していくことはあるんだよな、と思わせてくれます。自分にとっても、誰かにとっても、そういう存在でいられたら十分かもしれない、と気持ちが少し軽くなるんです。 派手な物語ではないけれど、人生の途中で「人との距離の取り方に疲れてしまったとき」にそっと効いてくる本だと思います。そんな人に刺さる一冊です。
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