
富豪刑事(新潮文庫)
筒井 康隆
この本について
仕事でも日常でも、「なんで自分だけ感覚がズレてるんだろう」と思う瞬間ってありますよね。常識と思っていた行動が人に驚かれたり、逆に他人のやり方がどうにも理解できなかったり。そんなとき、自分の感覚をどこまで信じていいのか、ちょっと迷うことがあります。 『富豪刑事』を読んで感じたのは、そのズレを無理に矯正しなくてもいいんじゃないか、というゆるい肯定でした。予約して当然と思う大助に呆れる同僚たち。その温度差をそのまま描きつつ、作者は時間の流れさえ大胆にいじってくる。事件の同時進行をどう書くか悩みながら、結局「面白くなるなら多少は崩していい」と判断するあたりに、肩の力が抜けるような視点がありました。きっちり正しくやろうとしても、結局は限界があるし、物語でも仕事でも「多少のズレ込みで成立するものなんだ」と思えてくるんです。 そして、未来のことを断言できないまま終わるラスト。主人公でさえ、破産するかもしれないし警察を辞めるかもしれない。物語なのに“いい感じの未来予想図”で締めないところが、逆に現実の私たちに近くて妙に落ち着きました。うまくいくかどうかは誰にも言えないけれど、それでも今日の判断を積み上げるしかない、という距離感です。 自分の感覚や選び方に不安がある人。あるいは、少しズレたままでも進んでいいのか迷っている人には、とても静かに効いてきます。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの30%が集中しています。
読書の順序
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