
サイゴンから来た妻と娘 (文春文庫 こ 8-1)
近藤 紘一
文藝春秋 / 1981-07-25
この本について
最近、ニュースを見ていて「自分が何を基準に判断しているのか」がよく分からなくなることがあります。国際情勢でも、身近な人間関係でも、見えているつもりで見えていなかったり、都合よく流れに乗っているだけだったり。頭では分かっていても、足元の感覚がつかみにくい、あの感じです。 『サイゴンから来た妻と娘』を読むと、そのモヤモヤに少し輪郭がつきます。著者がベトナム戦争末期を生々しく描く中で、国や社会が揺らぐ瞬間に、人が何を信じ、何を手放し、何にすがるのかが露わになっていきます。日本の世論に対する鋭い指摘や、「国民は自分のレベル以上の政府を持てない」といった言葉は、今の自分の暮らしにも無関係ではいられません。また、文化の違いを前にした家族の揺れや、生活の小さな選択がどれほど「生きるための知恵」なのかもじわじわと伝わってきます。 大上段に構えた教訓があるわけではありませんが、一つの社会が崩れゆく場面に立ち会った人の視点は、自分の日常を少し違う角度から見せてくれます。身軽に判断したつもりで実は何も見ていなかったかもしれない、そんな感覚をそっと刺激してくれます。 「自分の価値観が何でできているのか、一度立ち止まって確かめたい人」に、静かに刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの30%が集中しています。
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