
終りなき夜に生れつく (クリスティー文庫)
アガサ ・クリスティー、矢沢 聖子、矢沢 聖子
早川書房 / 2011-10-01
この本について
人間関係で「この人は本当は何を考えているんだろう」とか、自分でも自分の気持ちがつかめなくなる瞬間ってありますよね。相手を疑いたいわけじゃないのに、ふとした表情や言い回しにざわついたり、逆に自分の欲の濁りに気づいてしまったり。そんな揺れを言葉にしづらいまま抱えている人に、この物語は妙に沁みます。 『終りなき夜に生れつく』は、表向きはミステリだけど、読んでいていちばん刺さるのは“心の奥のざらつき”の描かれ方でした。誰かを愛しているはずなのにどこか不安を捨てきれない感じや、相手の善意が重く感じられる瞬間。さらには、所有欲や劣等感みたいな「見たくない自分」がふいに顔を出したときの居心地の悪さまで、主人公の語りを通して妙にリアルに突きつけられます。 登場人物同士の距離感の変化が細かくて、たとえばエリーの歌声がやさしく響く場面の幸福感と、グレタが部屋に入ってきた瞬間に空気がきしむ感じ。その対比が、読んでいる自分の感情まで揺らすんですよね。人を見る目が鋭すぎる人物に言い当てられる怖さや、母親に“最悪の自分”まで見透かされている感覚にも、妙に心が掴まれました。 誰かと深く関わるときに、自分の中の弱さや欲の存在を無視できなくなるタイプの人に刺さると思います。ミステリとしての面白さ以上に、「人の心の暗がりはこんなふうに形を変えるのか」と静かに震える読書でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第8章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの31%が集中しています。
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