
ドストエフスキー『悪霊』の衝撃 (光文社新書)
亀山 郁夫、リュドミラ・サラスキ
光文社 / 2012-04
この本について
人を理解したいのに、目の前の相手の行動や感情がまったく読めないときがあります。自分でも説明しづらい衝動があったり、正しさと欲望のあいだで身動きが取れなくなったり。そういう「人間の謎」に向き合うほど、言葉にしにくいモヤモヤが積もっていく感じ、けっこうあると思うんです。 この本は、『悪霊』という大作の裏側で、ドストエフスキーがなぜここまで「救われない人間」を描こうとしたのかを、草稿や同時代の文学とのつながりから丁寧に読み解いてくれます。スタヴローギンのように、信仰にもニヒリズムにも寄りかからず、ただ世界を鋭く観察してしまう存在は、どこが壊れていて、どこが人間的なのか。救済が届かないとはどういうことなのか。抜粋を読んで保存したくなった人は、まさにその「矛盾した心の動き」や「加害と憐れみの入り混じる瞬間」に反応している気がします。 読んでいると、物語を離れて、自分の中にも説明のつかない領域が確かにある、と静かに気づかされます。人は開いた本ではなく、謎として存在しているという視点は、職場でも日常でも、人との距離の取り方を少し変えてくれました。誰かを単純化して判断したくなるときに立ち止まる余白が生まれる感じです。 「人はなぜこんな行動をしてしまうのか」という問いが頭から離れない人に、とても刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの32%が集中しています。
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