
城の崎にて・小僧の神様 (角川文庫)
志賀 直哉
KADOKAWA / 2012-06-25
この本について
仕事でも生活でも、ふと立ち止まったときに「生きている実感ってどこにあるんだろう」と思う瞬間があります。忙しく動いている間は気づかないのに、ふと静けさに触れたときだけ、妙にその問いが重たく感じるやつです。僕もよくそこで足が止まります。 志賀直哉の『城の崎にて』を読んだとき、保存されていた抜粋と同じ部分で胸がざわつきました。生きている蜂と死んだ蜂が屋根の上で同じように存在していて、差があるようでほとんど境界がないように見えてしまうあの感覚。生と死みたいな大きすぎるテーマを語っているようでいて、実は「日常の中で立ち止まる瞬間」をそのまま描いているだけ、という距離感がちょうどいいんです。 この作品が効くのは、何かを劇的に変えてくれるからではなく、小さな視点の揺れをそっと差し込んでくれるところです。例えば、いつも通り通勤している道なのに、今日は妙に空気が重たく感じる理由が少しだけ説明できたり、自分の感情の輪郭が曖昧なままでも「それでいい」と思える余白が生まれたり。極端な答えを探しにいかず、いま目の前にある景色をただ受け取るだけで十分なんだと気づかせてくれます。 どこかで「静けさと向き合うのが怖い」と感じている人には、しっくりくると思います。文学だからこそ拾える感情が確かにあって、それが日々のざわつきの下にあるものをそっと掬ってくれる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
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