
氷点(上) (角川文庫)
三浦 綾子
小学館 / 1982-03-10
この本について
人と関わるとき、相手のちょっとした言動に過剰に反応してしまったり、好き嫌いの感情に振り回されたり、自分の中の“扱いにくさ”みたいなものに疲れることがあります。分かっているのに直らないし、そもそも自分は何に傷ついているのかすらよく分からない。そんなときに三浦綾子の『氷点(上)』を読むと、言葉にしづらかった感情の輪郭が少しはっきりしてくる感覚がありました。 登場人物の誰もが弱さや身勝手さを抱えていて、きれい事ではなく、嫉妬や恐れ、愛だと思い込んだ依存まで描かれます。「きらいだと思う自分の方が悪いことだってある」とか「大事なことほど口に出せない」といった場面に触れると、自分の中にも似た部分があると気づかされるし、それを完全に否定しなくていいのかもしれないと思える。啓造が不機嫌や責任から逃げられずに揺れ続ける姿には、社会の中で生きる自分たちの姿が重なります。 この物語が効くのは、誰かを責めるよりも先に「自分の中の複雑さ」を見つめざるを得なくなっている人だと思います。登場人物たちの弱さは極端に見えるけれど、その極端さのおかげで、自分の感情の動きが少し整理される。答えは示されないけれど、どこから考え始めればいいのかの足がかりが手に入るような一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第8章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの18%が集中しています。
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