
こゝろ (角川文庫)
夏目 漱石
平凡社 / 2005-08-10
この本について
人間関係って、距離の取り方がむずかしいなと思うことがありませんか。大事に思っている人ほど、いずれ誤解されたり、裏切られたりする未来を勝手に想像して、いま素直に尊敬したり甘えたりできなくなる…そんな自分に気づいてしんどくなる時があります。 『こゝろ』を読み返すたび、あの「未来の侮辱を受けないために、今の尊敬をしりぞけたい」という告白が妙に胸に残ります。自分の弱さを認めきれないまま距離を置いてしまう気配や、幸せなはずなのにどこか不安を抱えた夫婦の描写など、きれいごとでは片付かない心の揺れがそのまま置かれている感じがするんです。また、父の言葉を「田舎臭い」と切り捨ててしまう若い自分の未熟さも、振り返ると痛いほど分かる。人をどう見ているかで、自分の寂しさの形が変わってしまうことを改めて思い知らされます。 この物語が効いてくるのは、かっこつけずに他人と向き合うことに少し疲れたときや、自分の中の小さな嫉妬や不安をごまかせなくなったときだと思います。誰かを大切に思うほど、逆に怖くなるあの感覚を知っている人には、静かに刺さるはずです。 「気持ちの整理より、正しさに寄ってしまいがちな人」にとって、自分の心の奥で何が起きているのかを見つめるきっかけになる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの42%が集中しています。
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