
スイッチを押すとき (角川文庫)
山田 悠介
KADOKAWA / 2008-10
この本について
人間関係で消耗していたり、ふとした瞬間に「自分の感情って本当に自分のものなのか」と立ち止まるときがあります。表では普通に振る舞っていても、内側はざらついたまま進めない……そんな感覚を抱えること、けっこうあると思います。 山田悠介の『スイッチを押すとき』を読んだ人が保存していた言葉を眺めると、物語そのものよりも、“人の心が濁っていく瞬間”や“場の空気が静かに変質していく感覚”に反応しているように見えます。冷笑や一瞥、陰鬱といった表情の細かな揺れ。閑散とした空気に沈む気配。数字の「5536」に象徴される、個人を番号化された存在として扱う世界。そういう「じわっと心が削れる環境」が丁寧に描かれているから、自分の中にある弱さやざらつきを、他人事じゃなく追体験できるのだと思います。 この本が効いてくるのは、気持ちを立て直すような明るい言葉が詰まっているからではなく、感情がうまく扱えない状態そのものを、変にごまかさず目の前に置いてくれるところです。たとえば、自分が思っている以上に場の空気に影響されていることに気づけたり、誰かのちょっとした表情がどれだけ心に刺さるのかを改めて理解できたりします。読み終えるころには、自分の「網膜」に残っていたざらつきが少し整理されて、他人の反応に振り回されすぎない位置に戻してくれる感じがあります。 静かな緊張を抱えた日々を生きている人ほど、じんわり刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの64%が集中しています。
読書の順序
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