
火山のふもとで
松家仁之
新潮社 / 2025-01-29
この本について
仕事でも日常でも、相手にうまく考えを伝えられなかったり、自分のふるまいがどこかチグハグに感じたりして、あとから「なんであのとき何も言えなかったんだろう」と落ちこむことがよくあります。黙っている理由は自分の中にちゃんとあるのに、外からはただ沈黙しているだけに見える。そのズレに、どう向き合えばいいのか分からなくなることがあります。 『火山のふもとで』を読んで感じたのは、そのズレを無理に埋めようとせず、まず目の前の現実をひとつずつ観察することの強さでした。先生が天井の高さや障子の位置を淡々と示すように、ふだん気にも留めない細部が人の気持ちを左右している。それを言葉にして伝えることが、仕事にも人間関係にもそのまま効いてくるんだと腑に落ちます。なにかに押し切られる場面でも、自分の考えを言葉でたどれるようにしておくことで、相手とまともにやりとりできる余白が生まれる。建築の話をしているようで、けっきょくは生き方そのものの話なんだなと感じました。 夏の家で主人公のがたついたふるまいが少しずつおさまっていく描写も、この本の大きな魅力です。環境に身を置くことで気持ちが整っていく感覚がとてもリアルで、自分もこういう変化なら少しずつならできるかもしれないと思えます。仕事にも人にも迷いがちなとき、自分の態度や言葉の使い方をていねいに見直したい人に刺さる小説です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの18%が集中しています。
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