
ミシン missin’ (小学館文庫)
嶽本野ばら
小学館 / 2007-12-04
この本について
最近、自分が何を大事にして生きているのか、ときどきよく分からなくなることがあります。好きなものへのこだわりも、他人から見るとただのわがままに思えるんじゃないか…とか。そんな風に揺れる時に、この『ミシン』の断片的な言葉が、妙に胸の奥に残るんですよね。誰にも言えない偏愛とか、みっともないほど崩せない自分の規範とか、そういう“説明しにくい感情”をそのままの形で置いてくれる感じがあります。 この物語が効くのは、正しさよりも「好き」を守ってしまう人の痛みや可笑しさを、少しだけ整理して見せてくれるところです。例えば、お金がなくてもライフスタイルだけは手放さないという偏った覚悟や、深夜にお百度参りをするほど誰かを想ってしまう不器用さ。普通なら引かれそうなそれらの感情が、作中ではそのまま“人の美しさ”として描かれていて、自分の中のいびつさにも居場所があるんだと思わせてくれます。また、便利さや情報量ばかりが評価される空気の中で、何を大切にするかは結局自分で選ぶしかないんだと、少し距離のある視点もくれる作品です。 だから、この本は「こだわらずに生きられたら楽なのに」と思いながらも、どこかでそのこだわりを捨てられずにいる人に刺さると思います。物語としての強さもあるけれど、それ以上に、自分の中の“扱いにくい感情”をそっと拾い上げてくれるような読後感があります。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの36%が集中しています。
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