
ウォール街の物理学者
ジェイムズ オーウェン ウェザーオール and 高橋 璃子
この本について
仕事で数字を扱っていると、「理屈では説明できない動き」に振り回されることがありませんか。自分の感覚が鈍いのか、そもそも世界がランダムすぎるのか。その境目がわからず、判断に迷うことが自分にもよくあります。 『ウォール街の物理学者』を読んでみて感じたのは、ランダムさを前提にしながらも、そこに“手がかり”を見つけようとしてきた人たちの積み重ねは、自分の悩みと意外と地続きだということでした。バシュリエが市場の動きをランダムウォークで捉えようとした姿勢は、「人の心理を無視した冷たい数式」とはまったく逆で、いま観測できる情報がどう現在の価格に折り込まれていくのか、その関係性を淡々と追う作業なんですよね。モデルは万能じゃないし、誤差もバブルも起きる。それでも、一歩引いて市場を見るときの支えにはなる。そんな距離感がちょうどよかったです。 また、同時代には理解されなかったバシュリエの研究や、物理の方法をそのまま金融に持ち込む危うさの話は、「正しいはずのアイデアが現場で通用しない」という自分の日常にも重なりました。どこまで単純化して考えるか、逆にどこから単純化しすぎなのか。その線引きを探すときの指標になる本だと思います。 数字と現実のあいだで迷っている人に刺さります。
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