
破滅の美学 ヤクザ映画への鎮魂曲
笠原和夫
幻冬舎 / 2014-09-12
この本について
日常で「筋を通すって何なんだろう」「大人になっても人との距離感がつかめない」といったモヤモヤを抱えることがあります。まじめにやりたい気持ちはあるのに、どこかで自分でも説明しにくい感情が引っかかる。そんなときに、この本の空気が意外と効いてきます。 笠原和夫が描くヤクザの世界は、派手さよりも、人がどうしようもない環境の中で選んでしまう行動のリアルがむき出しです。たとえば、親分がわざと突き放すように見えて、戻ってきた若い衆を受け止めるくだりには、情と計算が同居していて、人が何にすがるのかが生々しく分かる。また、儀礼の細かさや口上の長さに触れていくと、「形が人を支えていた時代」の重さが伝わってきて、自分が普段当たり前だと思っている礼儀や距離感を少し俯瞰できるようになる。さらに、歴史上の俠客たちの“きれいごとでは済まない裏側”も淡々と描かれていて、正義や悪といった単純な線引きがほとんど役に立たないことに気づかされます。 だからといって、この本が何かを教訓めいて示してくるわけではありません。ただ、曖昧なまま抱えていた「人と関わる怖さ」や「自分の弱さの扱い方」に、ひとつ別の角度が生まれる。自分の中の判断基準がほんの少しズレる感じがあるんです。 人間の複雑さを正面から受け止めてみたい人に刺さる一冊だと思います。
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