
ワイルド・ソウル(上)(新潮文庫)
垣根 涼介
幻冬舎 / 2003-08-25
この本について
仕事でも生活でも、「努力してるのに報われてる感じがしないな…」とか、「自分だけ別の舞台に立ってるんじゃないか」という感覚、けっこうしぶとくつきまといますよね。逃げ場があるようでなくて、でも踏ん張る理由も見つからない時期って、誰にでもあると思います。 『ワイルド・ソウル』の抜粋を読んでいると、その“しぶとい感覚”に正面から触れてくる場面が多いんですよ。例えば、異国の地で何度も職探しに失敗しながら、それでも淡々と川に出て食料を集める衛藤の姿は、「意味が見えなくても動くしかない時間」を経験した人には刺さるはずです。さらに、国家や社会への失望に直面しながらも、目の前の相手との信頼だけは崩さなかった姿勢には、どんなに状況が悪くても“自分が依って立つ場所”を手放さないことの重さがにじんでいます。そして、裕福な観光客を横目に「自分はもう同じ舞台ではない」と痛感するシーンは、環境や選択の違いが残酷に差として現れる瞬間のリアルさが、胸に迫ります。 この小説が効いてくるのは、前向きになりたいというより、「今の自分の足元をちゃんと見たい」と思っている時です。華やかな成功物語ではなく、泥まみれでも信頼だけは曲げなかった人間たちの姿が、変に飾らずに自分の輪郭を整えてくれる感じがあります。 自分の立っている場所に確信が持てない人にこそ、じわっと沁みる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの44%が集中しています。
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