
逃亡くそたわけ (講談社文庫)
絲山秋子
講談社 / 2007-08-10
この本について
仕事でも日常でも、「もうちょっと頑張れたはずなのに、今日は無理だな」とふいに限界が来ることがあります。理由は説明できないのに、胸の奥だけがざわついて、どこにも居場所がない感じになるあの時間。自分でも扱い方がよくわからない心の揺れを、どうしたらいいのかと思いながら過ごす日ってありますよね。 『逃亡くそたわけ』の抜粋を読んでいて、刺さる人はその“揺れ”そのものに反応している気がします。意味のわからない言葉が頭の中で鳴り続ける感覚とか、線香花火が終わった瞬間の「紛れていたさびしさ」が一気に押し寄せるところとか、説明のつかない衝動に身体をもっていかれる主人公の感覚が、とても生々しい。自分でもうまく語れない気持ちに言葉を与えてくれるところが、この本の大事な位置だと思います。 物語としては逃避行ですが、読みながら感じるのは「逃げたい」と「戻りたい」が同時に胸にあるあの複雑さです。どこにも落ち着けない時に、それでもどこかへ向かおうとする気配が、この作品にはちゃんと描かれています。自分の情緒がぐしゃっとしている時に読むと、無理に整えなくてもいいんだと思わせてくれる。そのままの混乱でも物語は進むし、人も生きていける、という微妙なリアリティがあります。 行き場のない気持ちを抱えたまま生きている人に、静かに届く一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの57%が集中しています。
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