
止まりだしたら走らない
品田遊 and error403
この本について
日々、人と話しているのに独り言みたいに感じたり、自分の“軌跡”がどこにも届いていない気がしたり。そんな薄い不安を抱えたまま、なんとなく毎日をやり過ごしてしまうことってありますよね。怒られたわけでも、傷ついたわけでもないのに、なぜか胸の奥にずっと引っかかる感じが残る。僕もよくそこで足が止まります。 『止まりだしたら走らない』は、そういう「言葉にしきれない違和感」を、無理に前向きに整理したりせず、そのまま丁寧に置いてくれる本でした。例えば、名前とあだ名の話。名付けの背景なんて忘れていたけど、誰かとの関係の中で偶然生まれる呼び名の方が、生きた自分に近い気がする。そんな小さな視点の転換が、思いがけず心に居場所をつくってくれるんです。また、電車のシーンでは、全員が“乗る理由”を抱えているという当たり前の事実が、逆に世界の不思議さや窮屈さを浮かび上がらせます。自分の感覚だけが変なんじゃない、と静かに安心させてくれる感触がありました。 物語を通して描かれるのは、大人と子供の境界みたいな場所にいる人の、不器用でまっすぐな思考の流れです。そこには “正しさ”よりも、どうにも言葉にならない揺れがそのまま残っている。だからこそ、同じように迷っていると、妙に呼吸がしやすくなる瞬間があると思います。 自分の考え方が少し歪んでいる気がするけど、その歪みを無理に直したくはない——そんな人に刺さる本です。
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