
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
伊藤 計劃
早川書房 / 2007-06
この本について
ときどき、自分の感情や判断って、本当に自分の意思なのか分からなくなることがあります。ニュースを見て焦ったり、誰かの強い言葉に引っ張られたり、気づけば「なぜそう思ったのか」が曖昧なまま動いてしまう。頭では冷静でいたいのに、心が先に反応してしまう感じです。 『虐殺器官』を読んでいると、そのモヤモヤを真正面から突きつけられます。音や言葉が思考をバイパスして感情に触れてしまうこと。人は完全に忘れられないし、完全に理性的にもなれないこと。自由とは、選べるということ以上に「選ばざるを得ない状況で、何を捨てるか」を自分で引き受けること。物語の中の極端な状況なのに、日常の行動レベルで思い当たりすぎて、読んでいて何度も手が止まりました。 この本の効き方は、決して分かりやすい勇気をくれる類ではありません。ただ、自分の感情がどうショートカットして判断を決めてしまうのか、あるいは他人の言葉がどう侵入してくるのかを、いつもより一歩深い場所で見つめ直すきっかけになります。選択に迷いがちなとき、その迷い自体を「人間の構造」として扱えるようになるというか、無理に正しさを決めなくても、自分の立ち位置を少しだけ持ち直せる感覚があります。 「感情と理性のあいだでもがいている自覚がある人」に、静かに刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの16%が集中しています。
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