
とにかく散歩いたしましょう
小川 洋子
この本について
どうしてこんなに気持ちが沈むのか、自分でも理由がよく分からないまま、でも日常はちゃんと動いてしまう。そんなズレに戸惑うことってありますよね。前に進まなきゃと思うほど、逆に立ち止まってしまうあの感覚。僕もよくそこでつまずきます。 『とにかく散歩いたしましょう』は、そんなときに「無理に浮上しなくていい」と言ってくれるような一冊でした。たとえば、沼の底に沈んでいく描写に惹かれた方は多いと思うのですが、あれは絶望の話ではなく、足元のさらに下をじっと見つめることで、ようやく目の前に小さな手がかりが浮かぶ、という感覚に近いんですよね。書くことに限らず、気持ちが散らかっているときの向き合い方として、妙にリアルに感じました。また、子どもが「楽しかった」としか書けないシンプルさを名文と捉える視点が、ものごとを捉えすぎて疲れてしまう大人にそっと効いてきます。取り繕わない言葉の強さを思い出させてくれるんです。そして、文字の形から物語を拾い上げるエピソードのように、自分だけが見つけられる小さな世界を大切にしていいんだと、少し気が楽になります。 日々の感情の揺れを「メモのように拾い直したい人」に刺さる本だと思います。歩くようなペースで読めて、読み終わる頃には、沈んでいたはずなのにどこか呼吸が深くなっている、そんな一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの38%が集中しています。
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