
紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
ケン リュウ and 古沢 嘉通
早川書房 / 2015-04-25
この本について
最近、人との関わり方に妙な疲れを感じることが多くて、「自分ってどこに立っているんだろう」と立ち位置がぼんやりする瞬間が増えました。個人で完結しているように見えて、実際は誰かの歴史や感情や選択のうえに立っている。そのことに気づくと少し気が重くなるけれど、同時に心が静かになることもあります。 『紙の動物園』を読んでいて強く感じたのは、ケン・リュウはその「網の中にいる感覚」をまっすぐ描く作家だということです。日本語や文化への深い観察には、外から見た鋭さと、内側に寄り添おうとする温度が同居していて、自分の見慣れた風景を新しく照らしてくれます。もののあはれの説明にしても、観念ではなく、生きることと死に近さの中でどう心が動くのかを丁寧に拾ってくれるので、読んでいて変に構える必要がありません。 さらに効いたのは、「個々の石はヒーローではないけれど、ひとつにつどった石はヒーローにふさわしい」という視点です。孤立しているように見える毎日でも、いつのまにか大きな流れの一部になっている。そう思うと、自分の行動が極端に小さく見えても不思議と気持ちが折れません。人生が一直線ではなく、円弧として完成していくという受け止め方も、いま焦りを抱えている僕には心地よかったです。 「自分という個人がどこまで自分なのか」に少しでも引っかかる人に、とても刺さる短編集だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの23%が集中しています。
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