
殺人者はいかに誕生したか―「十大凶悪事件」を獄中対話で読み解く―(新潮文庫)
長谷川 博一
この本について
人間関係で「え、そんなつもりじゃなかったのに」と言われて戸惑うことってありますよね。相手の受け取り方が自分の想像とズレて、気づいたら誤解が積み上がっていたりする。あのズレの正体がわからないままだと、自分の中にぼんやりした不安だけが残ります。 この本を読んでいて印象的だったのは、加害者の語りの中にも、その「ズレ」が繰り返し出てくることでした。覚えのない言動を指摘されたり、自分では建設的に動いたつもりが、周囲からはまったく別の人物像として扱われてしまったり。もちろん扱われているのは重大事件ですが、その背景にある認知の偏りや、人との関係が歪んでいく過程は、日常の小さな違和感の“極端な先”にあるものとして読むことができます。 だからといって、この本が人間理解の決定版というわけではありません。ただ、他者との距離感がわからなくなる瞬間や、自分の中のモヤモヤに名前が付けられない時に、「人の認知はここまでズレることがあるのか」と視点を一段引かせてくれる感覚があります。特に、感情ではなく事実ベースで状況を整理したい人には、著者と受刑者の対話から得られる細かな手がかりがしっくりくるはずです。 自分や他人の“見えている世界”の違いに気づきたい人に、とても向いている本だと思います。
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