
荒野に獣 慟哭す 1 獣化の章 (徳間文庫)
夢枕獏
徳間書店 / 2014-05-15
この本について
人と話していて、「ちゃんと伝わっているはず」と思っていたのに、あとから振り返ると全然意図どおりじゃなかった…みたいなこと、けっこうありますよね。自分では普通に話しているつもりなのに、相手からすれば別のものに聞こえていたり、そもそも自分が思っていたほど言葉になっていなかったり。あのズレの正体って何なんだろう、と考え込むことがあります。 『荒野に獣 慟哭す』のこの抜粋が刺さった人は、おそらくその「自分の認識と現実の差」に引っかかっているのだと思います。ビデオ越しに自分のしゃべり方を見て、幼児のようだったと気づく場面は、ちょっとしたホラーに近いのに、どこか身に覚えがある。自分が思っている自分と、外から見える自分。その差を突きつけられる瞬間のざらつきが、この作品には静かに潜んでいます。 物語自体はハードな要素も多いのですが、この「ズレ」を描くことで、登場人物たちの行動や判断が急に身近に感じられるんですよね。極端な状況に置かれたとき、人は何を誤解して、どこで立ち止まって、どう自分を見直すのか。フィクションとして読みつつも、日常のコミュニケーションにそのまま持ち帰れる視点がいくつもあります。自分の見え方に不安を抱えたときの、ちょっとした鏡代わりにもなる気がします。 自分の言葉と本音の距離感に悩む人には、特に刺さる一冊だと思います。
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